前回は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)について取り上げてきました。今回は「見えない障がい」の中でも学校生活において特に困難を感じやすい「学習障害(Learning Disabilities/LD)」について解説します。
☆学習障害(LD)とは?
LDは、知的発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」などの特定の能力に困難を抱える状態を指します。
例として:
・文字の読み書きが極端に苦手(ディスレクシア)
・数字の理解や計算が難しい(ディスカリキュリア)
・話の順序を整理して伝えるのが困難(ディスグラフィア)
などがあります。
☆ 学校現場での困りごと
学習障害を持つ子どもたちは、以下のような困難を日々経験しています:
・黒板の字をノートに写すのに時間がかかる
・読んだ内容が頭に入らない、理解できない
・漢字が覚えられない
・授業のスピードについていけない
・教師に「努力不足」と誤解される
これにより、自己肯定感が下がり、学校に行きたくない気持ちが強まることもあります。
☆ 見えにくさの難しさ
LDは一見してわかりづらく、知的障害とも異なるため、 「なんでできないの?」「怠けてるのでは?」という誤解を受けやすいのが現状です。
また、ASDやADHDと併存していることも多く、専門的な評価・診断が必要です。
☆支援の具体例
・読み書きに困難がある子には、タブレットやPCによるICT支援
・音声教材の利用や読み上げソフト
・テストの時間延長や問題の読み上げ対応
・ノートテイク(代筆)の支援
・学校内外での学習支援やカウンセリングの併用
☆大人になってからのLD
大人になっても、LDによる困りごとは継続することがあります。
・書類の作成や読解に時間がかかる
・メールの誤字脱字が多い
・マニュアルを読むのが苦手
・数字に対する苦手意識が強い
職場では「仕事が遅い」「不注意」と誤解されがちですが、適切な配慮やツールの活用で業務は十分にこなせる場合もあります。
☆障害者白書にもみるLD支援の重要性
内閣府「令和6年版障害者白書」でも、LDを含む発達障害への理解促進と教育現場・職場における支援の充実が提言されています。 「誰ひとり取り残さない支援」の実現のためにも、早期発見と継続的なサポートが不可欠です。
出典:
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r06hakusho/zenbun/index-pdf.html
LDは本人の努力不足ではありません。 「見えない障がい」であるがゆえに、周囲の理解や支援が何よりも重要です。 一人ひとりが自分の特性を理解し、周囲と共に歩んでいける環境づくりが求められています。
次回は「精神障害(精神疾患を含む障がい)」について触れていきます。
前回は、自閉症スペクトラム障害(ASD)についてご紹介しました。今回はその続きとして、見えない障がいの中でも特に日常生活や仕事で困りごとが生じやすい「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」について掘り下げていきます。
☆注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは?
ADHDは発達障害の一種で、以下の3つの特徴が組み合わさる場合が多いとされています:
①不注意(集中力が続かない、忘れ物が多い)
②多動性(落ち着きがない、じっとしていられない)
③衝動性(考える前に行動してしまう)
これらの症状は子どもに限らず、大人になってからも継続することがあり、仕事や人間関係に影響を与えるケースが増えています。
☆ ADHDの具体的な特徴
・会議中に落ち着きがなくなる
・話を最後まで聞けず、途中で口を挟む
・物をよくなくす、忘れ物が多い
・スケジュールやタスク管理が苦手
・衝動買いや感情の爆発が起こりやすい
これらは誰にでも一時的にあるものですが、ADHDの場合は日常生活全般にわたり強く影響します。
☆大人のADHDについて
大人のADHDは「仕事が続かない」「人間関係がうまくいかない」などの形で表れることが多いです。
特に:
・報連相(報告・連絡・相談)が苦手
・時間管理ができない
・片付けができない
といった傾向がある場合、自分でも気づかずにADHDであることもあります。
☆ADHDへの具体的な配慮例
・仕事や家庭でのToDoリストの活用
・タイマーやアラームを活用した時間管理
・口頭だけでなく、メモや掲示での指示確認
・衝動性を抑える工夫(すぐに決断しないなど)
☆支援の現場から見える課題
ASDと同様に、ADHDも「怠けているだけ」と誤解されがちな障がいです。 支援学校や福祉施設でも、大人になってから困りごとが表面化し、相談に来られる方が少なくありません。
・周囲の理解不足
・本人の自己肯定感の低下
・医療・福祉サービスの連携不足
こうした課題に対して、地域全体でのサポート体制が求められています。
ADHDもまた「見えない障がい」のひとつです。 その特性を正しく理解し、日常生活や仕事の中で無理なく支援できる環境づくりが必要だと感じています。
次回は「学習障害(LD)」について掘り下げていく予定です。
前回のブログでは「見えない障がい」の具体例と特徴についてご紹介しました。今回は、自閉症スペクトラム障害(ASD)について掘り下げていきたいと思います。
☆自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?
ASDは発達障害の一種で、以下の2つの特徴が主に見られます。
①社会的コミュニケーションや対人関係の困難
②限定された興味や行動パターン、こだわり行動
かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」などに分類されていましたが、現在はまとめてASDという名称が使われています。
☆ ASDの具体的な特徴
・空気を読むのが苦手
・会話のキャッチボールがうまくできない
・感覚過敏(音・光・匂いなど)
・予定変更への強い抵抗感
・手順やルールへの強いこだわり
・興味が偏る(特定のことだけを極端に好む)
これらの特徴は人によって強さや現れ方が異なります。そのため「スペクトラム(連続体)」という言葉が使われています。
☆大人のASDについて
ASDは子どもだけでなく、大人にも広く見られます。以下は大人のASDでよく見られる傾向です。
・職場でのコミュニケーションがうまくいかない
・マルチタスクや臨機応変な対応が苦手
・興味のないことに集中できない、逆に興味があることには極端に集中する
・繰り返しの作業やルーティンを好む
・些細な変化に強いストレスを感じる
大人の場合、自分では気づかずに生きづらさを抱えたまま生活しているケースも少なくありません。診断を受けず「生きづらさの原因がわからない」と感じている方も多いと言われています。
☆支援学校や福祉の現場で感じる課題
支援学校やグループホームなどの現場では、ASDの特性による以下のような場面がよくあります。
・グループ活動が苦手で孤立しやすい
・突発的な行動や言動に周囲が戸惑う
・支援者側の理解不足によるトラブル
また、制度面でもASDは「見えにくい障がい」として支援を受けづらい場合があり、家族の負担が大きくなることも課題です。
☆ASDの方への具体的な配慮例
・事前に予定やルールを細かく伝える
・視覚的な情報を活用する(予定表や絵カード)
・感覚過敏への対応(イヤーマフ、暗めの照明など)
・興味関心を活かした活動内容の工夫
・大人の場合、就労先や家庭内での配慮(明確な指示・過度な雑談を控えるなど)
ASDは見た目では分かりにくいですが、本人も周囲も生きづらさを感じやすい障がいです。 まずは「困っていることは何か?」を丁寧に聞き取り、一人ひとりに合った支援や環境調整を行うことが大切です。
一般的に「障がい者」という言葉から連想されるのは、車いすを利用している方や、視覚・聴覚障がいなど、
身体の一部に明確な機能制限がある方々です。医療的ケアを受けている様子や、補装具を装着している姿など、
目に見える障がいに対する印象が強く根付いています。
しかし、実際には外見からは判断できない“見えにくい障がい”を抱えている方も多く、
その存在はまだ社会的に十分に理解されているとは言えません。
見た目にはわからない障がいには、以下のようなものがあります。
・自閉症スペクトラム障害(ASD)
・注意欠陥・多動性障害(ADHD)
・学習障害(LD)
・内部障害(心臓・腎臓・呼吸器等)
・精神障害(統合失調症、うつ病、不安障害等)
これらの障がいは「周囲に理解されにくい」「支援を求めづらい」「怠けていると誤解されやすい」など、
当事者にとって精神的な負担が大きくなることが多いのが特徴です。
教育現場では、発達障害のある児童生徒が通常学級に在籍することが増え、
教師やクラスメイトの理解不足によるトラブルや孤立が問題となっています。
また、就労の場面でも「空気が読めない」「報連相ができない」と評価されてしまい、
適応障害や退職に至るケースが後を絶ちません。
地域生活においても、障がい者手帳を持っていても見た目では分からないことから、
公共交通機関や施設で配慮が受けられない、心ない言葉を投げかけられるといった問題も散見されます。
2024年に内閣府が発表した『令和6年版 障害者白書』によると、
日本における障がい者数は以下の通りです。
・身体障害者:約436万人
・知的障害者:約114万人
・精神障害者:約614万人
→ 合計:約1,160万人(日本の人口の約9%)
このうち、精神障害者の数が特に増加しており、
見えにくい障がいに対する社会全体の理解と支援体制の整備が求められています。
出典:令和6年版 障害者白書(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r06hakusho/zenbun/index-pdf.html
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この度は、株式会社悠優のホームページをご覧いただきありがとうございます。
今回からブログをスタートすることになりました。
悠優は、仙台市を拠点に障害福祉・介護支援の分野で活動している法人です。
現在は、共同生活援助(グループホーム)の運営を中心に、
利用者さま一人ひとりが「安心して暮らし、穏やかに過ごす」ことができるよう日々支援を行っています。
福祉の現場というと、少し堅苦しい印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、
悠優では“明るく・前向きに・丁寧に”をモットーに、誰にとっても心地よい環境づくりを目指しています。
初回ということで少し堅い内容になりましたが、
これからどうぞ、よろしくお願いいたします。
そして、ご利用やご見学、採用などに興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
株式会社 悠優
代表取締役 今泉 英樹